Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by Koichi Takitani, None
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ICRP勧告(案)について、意見1~5を提出します。

意見1 パラグラフ(20)について

 「がんと遺伝性の影響には (中略) 被ばく線量の閾値はないと仮定する」との記述において、「仮定する」を「判断する」に修正すべきである。

その理由は、原爆放射線の健康後影響を長年にわたり調査してきた放射線影響研究所による2011年に公表された報告書(*1)には、「全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0-0.2Gyであり、定型的な線量閾値解析では閾値は示されず、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。」と明記されているからである。被ばく線量の閾値はないことは、もはや「仮定する」ことではなく、原爆放射線の健康後影響についての調査結果で裏付けられた科学的事実である。

【文献】

(*1)放影研報告書 RR4-11「原爆被爆者の死亡率に関する研究 第14報 1950-2003年:がんおよびがん以外の疾患の概要」(2011)

 この正文は、Radiation Research 2012(March); 177(3): 299-43に掲載の下記の論文(英文)である。 

Kotaro Ozasa,  Yukiko Shimizu, Akihiko Suyama, Fumiyoshi Kasagi, Midori Soda, Eric J.Grant, Ritsu Sakata, Hiromi Sugiyama and Kazunori Kodama:

Studies of the Mortality of Atomic Bomb survivors, Report 14, 1950-2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases.

 

意見2 パラグラフ(21)について

 参照する文献に、意見1に記した放射線影響研究所論文の記載を求める。

理由は、原爆放射線の健康後影響の調査にもとづく最近の知見を反映するためである。

 

意見3 パラグラフ(22)について

 「100ミリシーベルト未満では、証拠はそれほど明確ではない。」を、「100ミリシーベルト未満でも、がんを発生させる被ばく線量に閾値はないことが原爆放射線の健康後影響の調査で示されている。」に修正することを求める。

 理由は、意見1に記した放射線影響研究所論文にもとづく。

 

意見4 パラグラフ(80)について

 冒頭の「緊急時対応後に長期間汚染された地域に住む人々に対して、(中略) 委員会の勧告した1~20mSvの範囲内にまたはそれ以下で参考レベルを選択すべきであり、住民の実際の」に続く「年間1mSvオーダー(程度)への段階的な被ばく低減を目的として、一般的に年間10mSvを超える必要はないと勧告する。」との記述を、「年間1mSv以下への段階的な被ばく低減を目的として、一般的に年間5mSvを超えないことを勧告する。」への修正を求める。

 その理由は以下のとおりである。

(1)「年間1mSvオーダー(程度)」は、その解釈に幅が生じるあいまいな記述であり、不適切である。日本の法規では「周辺監視区域の線量限度は、1年間につき1mSv」(*2)と定められており、これを反映すべきである。

(2)長期間汚染された地域の被ばく線量限度には、日本の法令で定められている「放射線管理区域」の線量限度を参照すべきである。そこでは、「3月間につき1.3mSv」(*3)と定められており、これを年間(12カ月間)当たりに換算すると5.2mSv(四捨五入すると5mSv)である。放射線管理区域に立ち入る人々に対する線量制限値である5mSvを超えて10mSvを地域住民に対する長期にわたっての線量限度とすることは、人々を放射線から防護する上で、論理的一貫性がなく、不合理である。

 【文献】

(*2)経済産業省「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度を定める告示」第3条

(*3)同上第2条

 

意見5 Table 6.1について

 Publicに対するExisting exposure situation の欄にある「10mSv」は「5mSv」に,

「the order of 1mSv per year」 は「1mSv」に、それぞれ修正する。

 理由は、意見4で述べたとおりである。


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