Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by 岩州 信太郎, None
Commenting on behalf of the organisation

 


福島第一原発の地元県福島県の大人数の長期にわたる避難行動で、過去8年間で2000人以上の災害関連死者を出した。復興庁の調査では、平成31年3月31日現在で、岩手県467人(半年前調査以後の増加数:0) 、宮城県 928(0) 、福島県 2,272 (22) であり、20歳以下 2;20歳以上-66歳以下223;66歳以上2,047と、高齢者が多いが、働き盛りの年代も少なくない。ICRPは福島県の死者に死因を、放射線被ばくによるものとすることはないであろう。過去の特に大規模災害に於いて避難に伴う避難者の関連死について、その高い危険性が知られていた。しかし、政府と各自治体はICRPの被曝の危険性の表現:LNTとそれに伴う防護原則:ALARAに従い、避難指示を出したのである。津波被災地の岩手県と宮城県は1年過ぎで相当程度に関連死者数の発生割合は減っているが、福島県だけは4,5年間も高い発生割合が継続していたのある。

避難を指示した原子力災害対策特別措置法では、目的:「第一条 この法律は、原子力災害の特殊性にかんがみ、原子力災害の予防に関する原子力事業者の義務等、原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の設置等並びに緊急事態応急対策の実施その他原子力災害に関する事項について特別の措置を定めることにより……、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)その他原子力災害の防止に関する法律と相まって、原子力災害に対する対策の強化を図り、もって原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする。」となっている。しかし、結果は、先の通り法の目的とは真逆で、この「特別の措置」によって、2千数百人の災害関連死を生み出し、長期の避難が強制された。加えて、上記の特別の措置の具体化の一つとして作られた「原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」にもとづく“不必要な除染”で、個人および福島の市町村の住人と社会の様々の地域文化・産業・教育等々の財産が徹底的に破壊し尽された。何が、原子力災害の特殊性なのか??

 この最悪の「特別の措置」に根拠を与えたのがICRPの防護原則:ALARAである。原子力災害対策本部のある首相官邸 原子力災害専門家グループの一人、佐々木康人氏〔前(独)放射線医学総合研究所 理事長 前国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員元原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)議長)〕が『ICRP放射線防護体系の進化―倫理規範の歴史的変遷―(平成26年3月31日) 』〔第六十三回〕を記しているので紹介する:『……2007年勧告では、防護計画を立てる時に既に存在する線源の影響や、事故などの後の復旧期で、「平常時よりは高い被ばく(現存被ばく状況)」への対策も加わり、「平常時」、「緊急時」と併せて3つの被ばく状況に対する防護体系へと進化; 目的の変遷:ICRP創設当初は、被ばく者本人に身体症状が起こらないように被ばくを制限が放射線防護の目的;症状が出る境界となる線量(しきい線量)以下に抑えて目的達成;1950年代以降、広島・長崎の原爆被爆者の疫学調査〔=人権無視のモルモット扱いした調査〕や動物実験の結果から、「遺伝的影響や発がんのリスクは、しきい線量がない」とするのが妥当と判断:「確率的影響」を認知;その結果、「どんなに小さい被ばく線量だとしても線量に比例してリスクが存在する(直線しきい値なし:Linear Non-Threshold: LNTモデル)」が、防護上より安全となった。・・・従来のしきい値のある「非確率的影響」を回避すると共に、しきい線量のない「確率的影響」をできるだけ小さくすることが防護の目的となった=最適化:「合理的に達成可能な限り被ばくを低減する(as low as reasonably achievable: ALARA)」ことを目指す。 

この「合理的に達成可能な限り」の“合理的(reasonably)”とは一体どういう意味なのか?これは、関係住民やその文化を全く無視した極めて視野の狭く、実に“非”合理的なALARAという原則を“最適”と見なして、忠実に守り実行したのが日本政府と国会である。「しきい線量がない;できるだけ小さくする」となれば、能力も予算も人手も全くない訳ではなかった愚かで馬鹿正直な日本政府が、「事実上ゼロにするまで除染すること=環境破壊;事実上ゼロになるまでの長期の避難強制」を選んだとしても不思議ではない。このときの除染は「移染」といわれ、「利権」と言われたがのだが。今やろうとしている中間貯蔵施設も利権の巣だ。

つまり国会と政府は、国連科学委員会(UNSCEAR)とか、ICRPという一見権威のありそうな組織の言うことのみを聞いて「防護の特別の措置」を実践したのである。ところが、それが全くの間違いの判断だったことが、先述の結果が明確に示していることなのである。

「遺伝的影響や発がんのリスクは、しきい線量がない」とするのが妥当と判断:「確率的影響」を認知(直線しきい値なし:Linear Non-Threshold: LNTモデル)」が、防護上より安全となると判断した根拠となった調査結果がそもそも間違いだったからである。それが、広島・長崎の原爆被爆者についてのABCCと、その継承機関RERFが行ってきている生涯にわたる疫学調査:LSSである。   

RERFの「残留放射線」に関する放影研の見解(2012年12月8日)」は矛盾だらけの説明である。『もしリスク計算の分母として用いられる放射線被曝量が、「残留放射線」を除いたことにより低めの数値になると、がんのリスクは高めに評価されることになります。放射線障害の防護基準策定に当たって高めのリスクを用いることは、防護上安全側に働くことになります。』とは正に驚くべき表現である。この表現を正直に生かしたのが先のLNTモデルである。「過ぎたるは、猶及ばざるが如し」とは紀元前のある人物の言葉だが、その教訓を知らない愚かな組織の考え方を反映している。

そもそも広島・長崎の2原爆は日本市民を用いた爆弾効果の試験であり、その後の調査を主導したのが原爆を落とした米国のABCCで、その被爆者調査の不適切性が、ABCC-RERF(放影研)設立70周年の記念式典で丹羽理事長は冒頭あいさつで「ABCC設立当初は『調査…放影研丹羽太貫理事長(73) 被爆者に公の場で初めて謝罪<毎日新聞2017年6月19日>』したことから、明確になった。つまり、ABCC調査は被爆者の救援や保護ではなく、もっぱら遺伝への影響が彼らの最大の関心事で、今も続けられているのは極めて非人道的で不適切な行為である。このABCCの被爆者の遺伝影響調査が被爆者に心理的に極めて大きな負の影響を与えたことが以下の広島市の原爆体験者健康意識調査報告書(2010年5月)で明確である。(1) 心身の健康影響のその④健康不安と差別・偏見体験の及ぼす影響について:『上記のように、基本調査の解析の結果においては、凄惨な原爆体験がもたらした影響以上に、放射線暴露の影響による健康不安や〔遺伝に関係した〕社会的な差別・偏見の体験が、精神健康に悪影響をもたらしていたことが明らかとなった。』

医学を勉強した者ならば、すぐに上記の記述をみて、LSSの疫学調査結果、特にがんリスクに関する調査結果がこの大きな心理的バイアスの影響を受けていたことに気づくであろう。つまり、広島被爆者は、ABCC/RERFに疫学調査を通して徹底的にいじめられ、そして周囲からも差別を受けて、強いストレス状態となり、その結果免疫力が大きく損なわれ癌発症などの交絡因子(confounding factor)になっているのである。そして、福島県民、特に避難者住人の多くが避難指示の根拠:ABCC/RERFの結果をそのまま引き継ぎ、防護原則として提示したICRPの「どんなに小さい被ばく線量だとしても線量に比例してリスクが存在する」という説明や各種の民間情報を受け、加えて周囲からの差別といじめも加わって強いストレス状態にあった/あることは、福島県の健康調査から明らかであり、チェルノブイリ事故の場合にも指摘されていたことである。つまり、広島被爆者の癌その他の種々の疾病の発症はABCC/RERF調査行為そのものが原因であり、福島県民、特に避難者住人の多数の災害関連死は、ICRPがABCC/RERF調査結果を生かした原則を忠実に取り入れて国が実施した特別措置の犠牲者なのである。いずれ、被爆者からと、災害関連死者家族らから、国とRERFやICRPに対して賠償請求がなされるのでは。

ともかく、防護原則は、JCOの事故での急性症状で放影研に運ばれた3人のうち、2人の死者と1人が無事退院した事例に学んで、まずは、しきい線量のない「確率的影響」の考えを廃止し、しきい値のある「非確率的影響」だけにしぼるのが良い。<以上>
岩州信太郎


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