東電福島原発事故により、福島県内の地域によっては未だ多くの公衆市民が事故前の線量限度年間1mSvを超える被ばくを強いられている。これは緊急時被ばくを20〜100mSvまで許容したことが大きな要因だ。原子力事故による放射線被ばくを完全に避けることは不可能と承知しているが、その防護については「余分な被ばくはできるだけ少なくするべき」との考えから緊急時とか復旧時とか分けるのではなく、事故前の被ばく限度基準に一本化するべきだ。緊急時対応などと基準を緩和することは「余分な被ばくはできるだけ少なくするべき」という根本的な考え方を後退させ緊張感もなくなり、当事者に「余分な被ばくはできるだけ少なくする」作業を省略させて安易な施策を取らせてしまうことになる。年間被ばく線量限度は事故対応の緊急時だろうが、いつであれ一般公衆は1mSv、職業人は50mSvとするべきだ。経済的および社会的要因を重視するあまり、原子力過酷事故後の公衆に多くの犠牲を強いるICRP勧告は見直すべきである。