Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by TANAKA Taro, Iwanami Shoten, Publishers
Commenting as an individual

(この意見は個人としてのものであり、所属機関を代表するものではありません。)

意見募集のプロセスについて

 市民団体からの要請に応じて募集期間を10月25日まで延長した柔軟な対応は高く評価します。
 締切日の10月25日に東京で開催したシンポジウムでは、録音・撮影が禁じられ、インターネット中継はありませんでした。また、メディアからインターネット中継の要請があったけれども許可されなかったと聞いています。10月25日のシンポジウムでの議論や内容が広く知られないままに、意見募集の締切を迎えることは、シンポジウムが公衆対話の一環と位置づけられていた趣旨と矛盾していると考えます。少なくとも、録画・資料が公開されてから一定期間後に、締切を置くべきであったのではないでしょうか。

東京電力福島原発事故の教訓としての日本政府の対応について

 以下は、10月25日に東京で開かれたシンポジウムをふまえて記述しますが、残念ながら録音・撮影が禁じられていたため、手元のメモにもとづかざるを得ず、不正確である可能性があり、また、締切が同日であるため、生じ得る不正確さはこの状況に強いられたものであることをお断りしておきます。

 10月25日のシンポジウムにおいて、ジャック・ロシャール氏は、福島事故からの教訓と題したスライドにおいて、ethical dimensions associated with management of the accidentがmay be very importantだとお話しになりました。ロシャール氏は続くスライドで、ethical dimensions in recovery processの1つのポイントとして、respect of people's decisionsと書かれていました。また、expertsに向けたキーワードの一つにjusticeが挙げられ、ポイントの一つにshare informationsが挙げられていました。
 ロシャール氏の発表は、「福島ダイアローグセミナーから何を学んだか?」という枠組みにおいてではありましたが、management of the accidentに関わりpeople's decisionsに大きな影響を及ぼすのは何よりも政策であるため、expertsには、行政を含めて捉えるべきであると考えます。また、事故を起こし、事故対応作業を行っている主体、すなわち今次事故の場合は東京電力も含めて捉えるべきであると考えます。
 すでに市民団体からのコメントの中には、日本政府の対応についても検証した上でなければ、事故の教訓は引き出させないはずではないか、という指摘がなされています。この点について、市民団体および国会議員との対話に応じたICRP委員からは(こうした対話に応じられたことは高く評価します)、政策の評価は行えないという趣旨の応答がなされていますが、ICRP文書は、各国政府が参照するガイドラインであるとする以上、そのガイドラインによりどのような政策が行われたのかという事実の認識は、最低限必要ではないでしょうか。その際、respect of people's decisionsとjusticeの観点が活かされることを期待します。それは、事実の認識を政府文書のみに頼るのではなく、市民団体が指摘するような、事故により影響を受けた人々の視点を活かすことであるはずです。その際には、福島ダイアローグセミナーに留まらず、市民団体から指摘されているように、例えば避難者の視点も求められるのではないでしょうか。
 その一つの例が、10月25日のシンポジウムでも現れていました。内閣府原子力災害対策本部原子力被災者支援チームの野口康成氏の講演後に、ある福島県民から質問がありました。その質問の一つは、「故郷を離れて生活を始める人への施策として、(住宅の)追い出しをくらっている状況があり、(福島)県が裁判を起こし、バックに国があり、実際には追い出しである」という趣旨の状況説明に関するものでした。時間が限られていたとはいえ、野口氏の応答は、質問の趣旨を十分に参加者に説明したものとは言えないと感じられるものでした。(午前のセッションでは同時通訳付きであったのに、野口氏らが発表した午後のセッションでは不可解なことに同時通訳がなくなり、日本語でなされた上記質問は、野口氏によって会場参加者に説明される必要がありました。)野口氏は、政府はextra medical careを提供し(と聞こえたのですが、この説明がどうしてなされたのか、理解がおよびません)、政府は避難を継続する人にfinancial supportをしていたが、それをやめた、それはequality of evacueesのためだと答えていました(残念ながら聞き取りメモによるため不正確である可能性があります)。この質問と応答における差は、事実認識における、影響を受けた人の視点の重要性を表していると考えられます。また、この状況は、respect of people's decisionsとjusticeの観点においてどのように捉えられるのか、その重要性を指摘されたロシャール氏、およびICRP委員各位におかれては、ぜひご検討いただきたいと思います。
 十分な事実認識の集成の上でなければ、今回の文書改訂は意味が失われるばかりではなく、害を生じ得るとも考えられます。したがって、改訂は、事実認識の集成の上でなされることを期待します。そのためには、現段階で公表スケジュールを固定することは避けるべきであると考えます。

福島県の甲状腺検査によってみられる甲状腺がん発見率の地域差について

 福島県で行われている事故時18歳以下の人々に対する甲状腺の悉皆検査は、検査2巡目が事故影響との因果関係を検討する上で中軸となるとされてきました。その2巡目の検査では、甲状腺がん発見率に明白な地域差がみられています。この事実は重大であり、注目される必要があります。


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