1. 被災者等stakeholderが被ばく防護に関する政策決定に参加する権利及び被ばくを避ける権利を保証し、かつ、これら権利の行使状況を公開すべきである。更に、「co-expertise」の実現のため、専門家は、被災者等stakeholderの意見・状況を十分把握すべきである。
(理由)日本政府はICRP勧告を恣意的、部分的に運用し、ICRPの現存被ばく時の参考レベル(年1-20mSvの下方から選択、代表的な値は1mSv)は採用しなかった。ICRP勧告が強調する「ステークホルダーの関与」は、避難区域設定、再編、解除、子ども・被災者支援法基本方針策定など、重要な政策の決定の際には行われなかったし、反対意見を述べても無視されてしまった。
また、「co-expertise」を奨励しているが、疑問がある。日本においては、被ばく下で生活することを前提とした「専門家」と「市民」の協力となってしまい、市民の声が真に重要な被ばく防護のための政策(避難政策、避難指示再編、解除など)に反映されることはなかった。
2. 緊急時・復興期においても、子供及び出産年齢の女性に対しては、被ばくの基準を「年間1mSv」以下にまで下げるべきである。
(理由)国連人権理事会が度々日本政府に対し指摘しているように、緊急時・復興期で、子供及び出産年齢の女性に対しては、「年間1mSv」以下にまで下げるべきである。これらの子供等に平常時よりはるかに高いレベルを設定すると広島・長崎原爆被災者と同様に被爆被災者として差別を受ける可能性が非常に高く、かつ、現実に避難した被災者が小学校等で差別を受け精神的ダメージを受けた。
3. 政府、原子力事業者及び原子力関連施設製造・解体事業者の賠償や支援などの責任について盛り込むべきである。
(理由)人々の避難、帰還、居住などの選択は、賠償や支援があってはじめて可能となるものである。日本における現在の避難者の困窮は賠償や支援政策の不備がもたらしたものである。
4. 避難者に対するスクリーニングの初期被ばく量把握の確実実施及びそのデータ保存の実施に関する記載を更に強調するべきである。更に、甲状腺検査・安定ヨウ素剤配布についても更に強調すべき。
(理由)避難者に対して行われたスクリーニングの除染基準が13000cpmから100,000cpmに引き上げられ、また福島県マニュアルで定めた13000cpm以上の人たちに対する甲状腺測定、安定ヨウ素剤の配布は行われなかった。記録にも残されなかった。これらについて記載すべきである。
5. 復興期(現存被ばく状況)における公衆に関し「年間10mSv」以下とする規定は、子供及び出産年齢の女性に対して適用せず、子供及び出産年齢の女性に対しては「年間1mSv」以下とすべきである。
6. 復興期(現存被ばく状況)における公衆に関し「年間10mSv」以下とする規定は、自主的に帰還を望む被災者のみを対象とすべきであり、無償住宅供与等経済的支援の廃止・社会的支援の廃止など、「一切の経済的・社会的強制力により帰還を促してはならないこと」を明示すべき。
7. 緊急時のみならず復興期においても巨大核事故を起こした原子力施設(高濃度被ばく物等)が撤去されるまで被災地にモニタリングポストを設置し、かつ、その計測結果を周知すべきである。また、これらの記載を強調すべきである。
(理由)日本政府は、避難解除の「年間20mSv」以下の地域でモニタリングポストの廃止を行政機関により勝手に進められている現状がある(Stakeholder involvement は無視されている)。一方、ホットスポットがある中で帰還を強いられた被災者には福島原発廃炉作業中にも関わらずモニタリングポストの撤去に不安を感じている。