放射線防護に関する方策を策定する必要に迫られた場合,ICRPの諸勧告が及ぼす影響は大きい.
それゆえ,ICRPの勧告は慎重かつ保守的で,常に安全側に立ったものであるべきです.
まずは,公衆被ばく限度は1mSv/yであり,これが最大限守られるべき基準であることを強調し再確認してください.
また,不溶性の放射性微粒子の存在が確認され,従来考えられていたものとは異なる挙動により,長期にわたる集中した内部被ばくをもたらす可能性が指摘されています.
不溶性微粒子は土壌汚染と関連が深いと考えられることから,被ばく防護の対策を策定するにあたっては,実効線量だけでなく土壌の汚染度や面汚染度も評価基準に入れてください.
「現存被ばく状況」と「参考レベル」の記述から,フクシマ原発事故後に日本政府は20mSv/yを下回る地域に,妊婦や子どもを含むすべての人々の帰還を強要しました.同時に,十分に低い被ばく線量(たとえば1mSv/y以下)になるまで,遠隔地に避難することで被ばくを避けたいと考える人たちの希望を奪いました.
結果,入域に厳しい規制が伴う「放射線管理区域」より,もっと厳しい条件の場所での生活を余儀なくされたのです.
日本国憲法のみならず,国連憲章・世界人権宣言・国際人権規約などにおいても,個人の尊厳が基本原理とされていることを重要視し,被ばく防護にあたっても集団の利益より個人の尊厳・選択が尊重されるべきことを明記してください.